糖尿病は「治せる」時代へ ―海外の最新研究で考える寛解のはなし(調布市つつじヶ丘駅前クリニック)

糖尿病が治る方法を考える

はじめに ― 診察室でよくいただく質問

「糖尿病は一度なったら一生治らないんですよね?」――調布市つつじヶ丘駅前内科クリニックでも、初めて糖尿病と診断された方から必ずと言っていいほどいただく質問です。かつては私も「上手に付き合っていく病気」とお伝えするのが精一杯でした。しかしこの数年、海外の質の高い臨床研究が「2型糖尿病は寛解(remission)しうる」という新しい景色を見せてくれています。

ここで言う「寛解」とは、糖尿病の薬を使わずに、HbA1c(過去1〜2か月の血糖の平均を映す指標)が正常に近い範囲で保たれている状態を指します。「完治」と言い切れないのは、生活が元に戻れば血糖も戻りうるからですが、それでも「薬なしで良好な状態を取り戻せる」という事実は、多くの患者さんにとって大きな希望です。今日は薬を増やす話ではなく、体重を通じて糖尿病そのものを軽くしていく可能性について、エビデンスをもとにお話しします。

なぜ体重を減らすと血糖が良くなるのか

2型糖尿病の多くは、内臓や肝臓、そして膵臓に脂肪が過剰にたまることと深く関わっています。肝臓に脂肪がたまるとインスリンが効きにくくなり(インスリン抵抗性)、血糖を下げるためにさらに多くのインスリンが必要になります。やがて膵臓にも脂肪がたまると、インスリンを出す細胞(β細胞)の働きそのものが鈍り、血糖が押し上げられていきます。この二つの臓器がお互いを悪化させ合う悪循環は「ツインサイクル仮説」と呼ばれています。

ここに体重減少で介入すると、まず肝臓の脂肪が数日〜数週間で、続いて膵臓の脂肪が数か月かけて抜け、インスリンを出す細胞の働きが回復しうる――これが近年の研究で提唱されている考え方です。つまり減量は「気休め」ではなく、糖尿病の根っこに直接効く介入なのです。だからこそ、脂肪がたまってからの年数が短い、診断早期の方ほど寛解を目指しやすい傾向があります。「気になり始めた今」が、実は最大のチャンスなのです。

体重を落とすと、糖尿病は「寛解」しうる ― DiRECT試験

この分野で世界的に注目されたのが、英国で行われた「DiRECT試験」です。かかりつけ医のもとで低カロリーの食事プログラムに取り組み、体重を大きく減らすという介入を行いました。

結果は印象的でした。介入を受けたグループでは、1年後におよそ46%、つまり約半数が寛解に達し、2年後でも36%が寛解を維持していました。さらに2023〜2024年に報告された5年間の追跡では、手厚い支援を続けた群の13%が5年後も寛解を保ち、通常ケア中心の対照群(5%)を上回りました。5年という長い目で見ると、介入群は観察期間のおよそ27%を「寛解の状態」で過ごしたのに対し、対照群はわずか4%。減った体重をどう維持するかという難しさも同時に浮き彫りになりましたが、「糖尿病は必ずしも一方通行の病気ではない」ことを示した意義は非常に大きいと言えます。

鍵は「どれだけ減らせたか」 ― 減量の量と寛解率

体重を減らす事によって糖尿病を改善

では、どのくらい痩せれば良いのでしょうか。DiRECT試験では、減量の幅が大きいほど寛解率が高まる、きれいな「量反応関係」が示されました。1年時点での体重減少と寛解率の関係は、おおよそ次のとおりです。

1年間の体重減少寛解に達した割合
体重が増加ほぼ0%
0〜5kg減約7%
5〜10kg減約34%
10〜15kg減約57%
15kg以上減約86%

2024年に The Lancet Diabetes & Endocrinology に掲載された、複数のランダム化比較試験を統合したメタ回帰分析でも、減量幅が大きいほど寛解に至る割合が高くなるという同じ方向性が確認されています。血糖値だけを追いかけるのではなく、「体重をどれだけ動かせるか」が寛解という目標に直結する。裏を返せば、数kgの減量でも血糖は必ず改善に向かうため、はじめの一歩に無駄はありません。

実践のヒント ― 続けられることから

もちろん、すべての方が寛解を目指せるわけではありません。糖尿病になってからの年数が長い方、痩せ型の方、インスリン分泌が大きく低下している方では、寛解より血糖の安定を優先すべき場面もあります。自己判断での断薬は低血糖などの危険を伴うため、絶対に避けてください。

そのうえで、診断から間もない方や体重に余地のある方にとって、減量は「最も効果的な処方箋」の一つです。大切なのは、無理な方法で一気に痩せることではなく、続けられる形に落とし込むことです。具体的には、まず主食(ご飯・パン・麺)の量を今より一口分減らす、清涼飲料や甘い缶コーヒーを水やお茶に置き換える、夕食を軽くして就寝直前の食事を避ける、といったところから始めてみてください。たんぱく質(魚・大豆・卵など)と野菜を先に食べ、糖質を後にする「食べる順番」の工夫も、血糖の急上昇をやわらげます。

運動については、いきなり激しいものは必要ありません。エレベーターを階段に、一駅手前で降りて歩く、といった工夫で1日の歩数を千歩増やすだけでも、積み重なれば大きな差になります。体重が3〜5%動くだけでも、血糖・血圧・脂質のすべてが良い方向に変わり始めます。そして忘れてはいけないのが、減った体重をどう「保つ」か。DiRECT試験でも、寛解を続けられた方の共通点は、減量後の体重を維持できていたことでした。短期間の頑張りより、ゆるやかでも続く習慣が、最後にものを言います。

受診のおすすめ ― 調布市つつじヶ丘で、早めの一歩を

糖尿病について診察室で相談

「健診で血糖値やHbA1cを指摘された」「糖尿病と言われたが何から始めればいいか分からない」――そんなときは、どうぞ一人で抱え込まずにご相談ください。京王線つつじヶ丘駅前の当院では、お一人おひとりに合わせた無理のない目標設定と、定期的なHbA1c・体重のチェックを一緒に行っています。腎臓病や透析を含む合併症の評価まで一貫して対応できるのも当院の強みです。「もう手遅れ」と思っている方こそ、早めの一歩が将来を大きく変えます。

つつじヶ丘駅前内科クリニックの外観

糖尿病についてより詳しい情報は、当院の糖尿病専門サイト「調布・糖尿病」でもご紹介しています。診療時間やアクセスなどはつつじヶ丘駅前内科クリニック 公式サイトをご覧ください。次回もエビデンスに基づく予防と治療のお話をお届けします。

参考文献

  • 5-year follow-up of the randomised Diabetes Remission Clinical Trial (DiRECT). The Lancet Diabetes & Endocrinology, 2023–2024.
  • Primary care-led weight management for remission of type 2 diabetes (DiRECT): open-label, cluster-randomised trial. The Lancet, 2018.
  • Impact of bodyweight loss on type 2 diabetes remission: a systematic review and meta-regression analysis of randomised controlled trials. The Lancet Diabetes & Endocrinology, 2024.

執筆

つつじヶ丘駅前内科クリニック 院長 医学博士 腎臓専門医・透析専門医・内科認定医 小出高彰