「最近、日中もトイレが近い」「夜中に何度も目が覚めてトイレに行く」——こうした頻尿・夜間頻尿は、加齢や水分の摂りすぎと思われがちですが、背景に糖尿病が隠れているサインかもしれません。
特に、これまでなかったのに急に尿の回数が増えた、夜間に何度も起きるようになった、という場合は注意が必要です。このページでは、なぜ糖尿病で尿が増えるのか、その仕組みと、頻尿の他の原因との見分け方、受診の目安について、専門的な視点から解説します。
糖尿病で頻尿・多尿が起こる仕組み ― 浸透圧利尿

糖尿病による頻尿は、単なる加齢や水分の摂りすぎとは異なり、「浸透圧利尿(しんとうあつりにょう)」という体の仕組みによって起こります。順を追って説明します。
① 血糖値が上がり、腎臓が糖を尿に出す 血糖値が高くなり、一定の値(腎性糖排泄閾値。およそ160〜180mg/dL)を超えると、腎臓が血液中の余分な糖を尿の中へ排出し始めます。健診で「尿に糖が出ている」と指摘されるのは、血糖値がこの水準を超えているサインです。
② 糖と一緒に、水分も大量に排出される 尿の中に糖が多く存在すると、その糖に引かれるようにして水分も一緒に排出されます。尿細管の中に再吸収しきれない糖があると、それに伴って水分が受動的に失われるためです(Halperin ML, et al. Am J Kidney Dis. 1997)。その結果、尿の量が増え(多尿)、トイレの回数が増えます(頻尿)。
③ 脱水になり、水を飲む量が増える 水分が失われて脱水傾向になると、脳が水分を求めて喉の渇き(口渇)を引き起こします。そのため水を多く飲むようになり、それがさらに尿量を増やします。「高血糖 → 糖が尿に漏れる → 水分も失われる → 多尿・頻尿 → 脱水 → 口渇 → 水を飲む → また多尿」という悪循環が生まれます。
つまり、糖尿病の頻尿は「たくさん飲むから出る」のではなく、高血糖によって糖と水分が尿へ強制的に排出されることが引き金です。喉が渇いて水を飲むのは、その結果としての反応なのです。
そもそも「多尿」「夜間頻尿」とは
医学的には、頻尿や多尿には目安となる定義があります。
多尿は、1日の尿量が体重1kgあたり40mLを超える状態(体重70kgの方でおよそ2.8L以上)、あるいは1日3L以上とされます。糖尿病による浸透圧利尿は、この多尿を引き起こす代表的な原因の一つです。
夜間頻尿は、排尿のために夜間に1回以上起きなければならない状態を指します(国際禁制学会 ICS の定義)。特に、夜間の尿量が1日の総尿量の一定割合(若年者で20%、高齢者で33%)を超える状態は「夜間多尿」と呼ばれ、糖尿病はその原因となりうる病態の一つに挙げられています(Weiss JP, et al.)。
日中・夜間を問わず尿量そのものが増えているタイプの頻尿では、糖尿病をはじめとした全身の病気が背景にあることがあり、注意が必要です。
糖尿病以外の頻尿の原因
頻尿は糖尿病で現れる症状ですが、他の原因でも起こります。自己判断で決めつけず、原因を見極めることが大切です。
- 泌尿器の病気:前立腺肥大・前立腺炎、膀胱炎などの尿路感染症、過活動膀胱
- 神経の病気:脳梗塞や脳出血後の神経障害など
- その他:水分やアルコールの摂りすぎ、塩分の多い食事、一部の薬(利尿薬など)、ストレス、加齢に伴う変化
- 糖尿病以外の内分泌疾患:尿崩症など、尿を濃縮する仕組みの異常
これらは尿量が増えるタイプ(多尿)と、尿量は多くないのに回数だけ増えるタイプ(膀胱の問題など)に分けられます。糖尿病による頻尿は前者(多尿を伴う)であることが特徴です。
こんな症状もあれば、糖尿病の可能性が高まります
頻尿だけでは糖尿病以外の可能性もありますが、次のような症状を伴う場合は、糖尿病の可能性が高まります。
- 喉が異常に渇き、水をたくさん飲む
- 疲れやすい、全身がだるい
- 食べているのに体重が減ってきた
- 手足のしびれ
- 健診で尿糖・血糖値・HbA1cの異常を指摘された
これらは、高血糖と浸透圧利尿、そして合併症の始まりを反映する症状です。頻尿にこうしたサインが重なる場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
糖尿病リスクのセルフチェック
次の項目のうち、当てはまるものが多いほど糖尿病のリスクが高い傾向があります。
- 家族・親戚に糖尿病の人がいる
- 太っている(BMI25以上)、または最近体重が増えた
- 外食が多く、甘いお菓子やジュースをよく口にする
- 運動の習慣がなく、座っている時間が長い
- ストレスの多い生活をしている
- 喉が異常に渇く
- 尿の回数が増え、夜中にトイレによく行く
- 残尿感がある、尿の匂いが気になる
- 食べてもやせる、最近急にやせてきた
- 全身がだるい、疲れやすい
- 手足がむくむ、しびれる
- 健診で尿に糖が出ていると指摘された
当てはまる項目が5つ以上ある方は、糖尿病のリスクが高い状態と考えられます。一度、医療機関で血糖値・HbA1c・尿検査を受けることをおすすめします。
気になる症状があれば、早めにご相談を
頻尿や夜間頻尿は、日常生活の質を下げるだけでなく、その背景に糖尿病が隠れていることがあります。糖尿病は初期には症状が乏しく、頻尿・口渇・体重減少といった症状が自覚できる頃には、すでに血糖値が高くなっているケースが少なくありません。
受診すると、血糖値・HbA1c・尿検査などで高血糖の有無を確認できます。糖尿病と診断された場合、血糖値が改善すれば尿への糖の漏れが減り、浸透圧利尿もおさまるため、頻尿の症状も和らいでいくことが多いです。
つつじヶ丘駅前内科クリニックでは、頻尿などの症状が気になる方、健診で血糖値・HbA1c・尿糖を指摘された方のご相談に対応しています。腎臓を専門とする院長を中心に、血糖値だけでなく腎臓や血管まで見据えた診療を行います。気になる症状がある方は、LINE予約・WEB予約からお気軽にご相談ください。予約なしでの受診も可能です。
参考文献・出典
- 日本糖尿病学会(編・著)「糖尿病診療ガイドライン2024」
- Halperin ML, Cheema-Dhadli S, et al. Factors contributing to the degree of polyuria in a patient with poorly controlled diabetes mellitus. Am J Kidney Dis. 1997;30(1):142-150.
- Weiss JP, et al. Nocturia and nocturnal polyuria の定義(International Continence Society Standardization)
