夜中に突然ふくらはぎがつって目が覚める、以前より足がつる回数が増えた、しかもなかなか治らない——こうした足のつり(こむら返り)は、疲れや冷え、加齢のせいと片づけられがちです。ですが、頻繁に繰り返すつりの背景に、糖尿病が隠れていることがあります。
実は、糖尿病の方は足がつりやすいことが、複数の研究で示されています。このページでは、調布市つつじヶ丘駅前内科クリニックが、なぜ糖尿病で足がつるのか、その仕組みと、注意すべきサイン、受診の目安について、医学的な根拠をもとに解説します。
糖尿病の人は、足がつりやすい ― 研究が示すこと

足のつりと糖尿病の関連は、これまで海外の研究で繰り返し報告されてきました。
高齢者の夜間のこむら返りを扱ったオックスフォード大学の総説では、糖尿病患者のおよそ3分の2に筋けいれんがみられ、とくに2型糖尿病と、糖尿病神経障害を伴う人に多いとされています(Allen RE & Kirby KA. Age Ageing. 2016ほか)。
米国糖尿病学会の学会誌『Diabetes Care』に掲載された研究でも、2型糖尿病の患者では筋けいれんの有病率が65.2%と、健常者の45.5%に比べて有意に高いことが示されました(p=0.009)。この研究では、神経障害こそが、けいれんの発症を左右する最も重要な要因であると結論づけられています(Diabetes Care. 2014)。別の研究でも、2型糖尿病での足のつりの頻度は最大で75〜78%に達すると報告されています。
つまり、足のつりは単なる疲れではなく、糖尿病、とりわけ神経の障害を映すサインになりうるということです。
なぜ糖尿病で足がつるのか
足のつりは、筋肉が意図せず強く収縮したまま戻らなくなる状態です。糖尿病でこれが起こりやすくなる背景には、主に次の要因が絡み合っています。
① 神経の障害(糖尿病神経障害) 最も大きな要因とされるのが、神経の障害です。高血糖が続くと、筋肉の動きを調整している運動神経が過剰に興奮しやすくなり(神経の過興奮)、筋肉が勝手にけいれんを起こしやすくなります。これは、神経のナトリウム・カリウムポンプの働きが乱れ、異常な電気信号が発生するためと考えられています(Neurology. 2012ほか)。
② 血流の低下 高血糖は血管を傷つけ、動脈硬化を進めます。足の筋肉へ届く血流が滞ると、筋肉が必要とする酸素や栄養が不足し、つりが起こりやすくなります。糖尿病に末梢動脈疾患(足の血流障害)が合併している場合は、この要因がより大きくなります。
③ 脱水・電解質の乱れ 高血糖で尿の量が増える(浸透圧利尿)と、体の水分やミネラル(カリウム、マグネシウム、カルシウムなど)が失われやすくなります。これらの電解質のバランスの乱れも、筋肉のけいれんを招く一因です(Clin Diabetol. 2019 総説)。
これらは単独ではなく、しばしば重なって足のつりを引き起こします。
放置は危険 ― 足のつりの先にあるもの
足のつりが続いているということは、その背景にある神経障害や血流障害が進行している可能性を示しています。ここで見過ごせないのが、神経障害がさらに進むと現れる「感覚の低下」です。
神経障害が進行すると、足の感覚が鈍くなり、痛みや熱さに気づきにくくなります。たとえば、ストーブや湯たんぽのそばに足を置いていても熱さに気づかず、低温やけどを負ってしまう、といったことが起こります。さらに糖尿病では足の血流も悪く、傷が治りにくいため、小さなやけどや傷から感染が広がり、最悪の場合、組織が壊死する壊疽(えそ)に至り、足の切断が必要になることもあります。
足のつりは、こうした深刻な足のトラブル(糖尿病足病変)の入り口にあたるサインの一つと考えられます。だからこそ、早い段階で気づき、対処することが大切です。
こんなときは、早めに受診を
足のつりは、一時的な脱水や運動のあとにも起こる、ありふれた症状です。しかし、次のような場合は、糖尿病やその合併症が背景にある可能性を考えて、医療機関で相談することをおすすめします。
- 足が以前よりよくつるようになった、頻度が増えた
- 以前はすぐ治っていたのに、最近は治りにくい
- 足のつりで夜中に何度も目が覚める
- 足の感覚が鈍く、いつの間にか傷ができていることがある
- しびれや痛み、冷えなど、足の他の症状も伴う
- 健診で血糖値・HbA1cの異常を指摘されたことがある
とくに、足のつりに加えて感覚の鈍さやしびれがある場合は、糖尿病神経障害が進んでいるおそれがあり、早めの確認が重要です。
調布市で足のつり・糖尿病が気になる方へ
つつじヶ丘駅前内科クリニックは、京王線つつじヶ丘駅南口すぐの内科クリニックです。調布市内のほか、つつじヶ丘・仙川・柴崎・国領・狛江方面からも通院しやすい立地で、糖尿病や生活習慣病のご相談を承っています。
当院では、血液検査で血糖値・HbA1cを確認し、糖尿病の状態を把握したうえで、神経や血流の状態もあわせて診ていきます。院長は腎臓を専門とし、血糖値だけでなく腎臓・血管・神経まで見据えた診療を大切にしています。
「いつもすぐ治っていた足のつりが、最近は治らない」——そんな小さな変化が、糖尿病のサインであることもあります。気になる症状がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。ご予約はLINE・WEBから受診も可能です。
参考文献・出典
- Sawai S, et al. Prevalence of Muscle Cramps in Patients With Diabetes. Diabetes Care. 2014;37(1):e17-e18.
- Allen RE, Kirby KA. Nocturnal leg cramps.(高齢者の夜間下肢けいれんに関する総説。Am Fam Physician / Age Ageing 掲載の総説を含む)
- Bhattacharya PK, et al. Muscle cramps — a mini review of possible causes and treatment options with a special emphasis on diabetics. Clin Diabetol. 2019;8(6).
- Prevalence of Muscle Cramps in Patients with Diabetes Mellitus. Neurology. 2012;78(1 Suppl):P03.196.
- 日本糖尿病学会(編・著)「糖尿病診療ガイドライン2024」
