糖尿病と言われたけど、薬は一生飲み続けるの?

「糖尿病です」と言われて薬を出されたとき、多くの方が最初に思うのは、血糖値の数字のことよりも、「これでもう、一生この薬と付き合うのか」という予感ではないでしょうか。

一度飲み始めたら、二度とやめられない。元の体には戻れない。そんなイメージが、診断そのものよりも重くのしかかることがあります。

先にお伝えしておきます。その予感は、半分は誤解で、半分は本当です。薬を減らせる方もいれば、続けた方が体を守れる方もいます。そして大切なのは、そのどちらになるかが、運任せではなく、ある程度は理由によって決まるということです。この記事では、その分かれ目をお話しします。

糖尿病は薬を一生飲むのか

まず、この不安の正体を整理します

「薬は一生か」という問いには、実は2つの別々の話が混ざっています。

ひとつは、糖尿病という状態そのものが続くのか。もうひとつは、を飲み続けるのか。この2つは、同じではありません。

血糖値が高い状態が薬なしで落ち着けば、糖尿病があっても薬を飲まない期間はありえます。実際、2型糖尿病では、血糖の指標であるHbA1cが薬なしで6.5%未満に保たれる状態を「寛解(かんかい)」と呼びます。これは国際的な専門家グループが2021年に定めた考え方で、薬を中止して3か月以上たった時点で判定します(文献1)。

つまり「糖尿病=一生薬」という等式は、必ずしも成り立ちません。ただし、誰でも寛解できるわけでもありません。ここが誤解されやすいところです。

なお、これは2型糖尿病のお話です。膵臓がインスリンをほとんど作れなくなる1型糖尿病では、インスリン注射が体に不可欠であり、やめることはできません。ご自分がどちらのタイプかは、必ず主治医に確認してください。

糖尿病は完治するのか

薬を減らせるか続けるかは、何で決まるのか

薬を手放せるかどうかは、主に次のような条件で変わってきます。

見つかった時期が早いほど、可能性は高い。 診断からの年数が浅く、もともとの血糖の高さが軽く、飲んでいる薬の種類が少ない人ほど、薬から離れやすいことがわかっています。逆に長い年数がたつと、膵臓の力が少しずつ弱り、離れにくくなります。

体重を減らせるかどうかが、最も大きな鍵。 減量を中心に取り組んだイギリスの臨床試験(DiRECT試験)では、1年後に参加者の46%が寛解に達しました(文献2)。ただしこれは体重の減り方に強く左右され、体重が増えてしまった人では寛解はゼロ、10〜15kg減らせた人では半数以上、という開きがありました。

ここで正直にお伝えすべき数字があります。手厚い支援のある試験ですら、5年後まで寛解を保てたのは1割前後でした(文献2)。さらに、日常の診療に近い大規模なデータでは、3年間で寛解に達した人は約2.9%にとどまったという報告もあります(文献3)。「頑張れば誰でも薬を卒業できる」とまでは言えないのが実際のところです。

大切なのは、これを「だから無駄」と受け取らないことです。体重が5kg、10kgと減るほど寛解の可能性は上がり、たとえ寛解に届かなくても、必要な薬は確実に減らせます。方向性は、努力が報われる形になっています。

糖尿病で薬を手放せる方法とは

「薬を続ける」は、負けでも後戻りでもありません

薬を飲み続けることに、後ろめたさを感じる必要はありません。むしろ、続けることが積極的に体を守っている場合があります。

血糖の薬の本当の目的は、目の前の数字を下げることではなく、10年、20年先の目・腎臓・神経・心臓の合併症を防ぐことにあります。診断されて早い時期にしっかり血糖を整えておくと、その後に多少ゆるんでも、数十年後まで合併症や死亡のリスクが下がり続けることが、長期の追跡研究で示されています(文献4)。今きちんと治療する価値は、将来に持ち越されるのです。

さらに近年の一部の薬(SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬など)は、血糖を下げるだけでなく、腎臓や心臓を守る働きが確認されています。そのため、血糖が落ち着いていても、腎臓や心臓の保護のためにあえて続けることがあります。この場合の「まだ薬を飲んでいる」は、悪い知らせではなく、守りを固めている状態です。

日本では、合併症を防ぐための血糖の目安として、多くの場合HbA1c 7.0%未満が一つの基準とされています(年齢や体の状態で個別に調整します)(文献5)。この目標を、薬あり・なしのどちらで達成するかは、体と相談しながら決めていくものです。

こんなときは早めに相談を

薬をやめたい・減らしたいと考えるときこそ、自己判断での中断は避けてください。急にやめると血糖が跳ね上がることがあります。

次のような場合は、様子を見ずに医療機関へご相談ください。

  • 強いのどの渇き、水を大量に飲む、尿の量が増える状態が続く
  • 食べているのに体重が急に減ってきた
  • だるさが強く、食欲がない、吐き気がある

これらが重なり、意識がぼんやりする・呼びかけへの反応が鈍いときは、著しい高血糖のサインのことがあり、救急の対応が必要です。ためらわず救急要請をしてください。

また、すでに薬やインスリンを使っている方で、冷や汗・強い動悸・手のふるえ・急な意識のもうろうが出た場合は、低血糖の可能性があります。対応をあらかじめ主治医と確認しておくと安心です。

医療機関では、何を見て判断するのか

薬を減らせるか、続けた方がよいかは、その日の血糖値だけでは決められません。医療機関では、おおむね次のような情報を組み合わせて判断します。

  • 問診:診断からの年数、体重の変化、生活習慣、家族歴、飲んでいる薬
  • 血液検査:HbA1c、血糖値、腎臓の働き(eGFRなど)、脂質
  • 尿検査:尿糖、尿たんぱく(腎臓へのダメージの有無)
  • 体重・血圧の推移
  • 必要に応じて、1型か2型かを見分けるための追加検査

これらから、「今は薬を減らす方向を試せるのか」「守りのために続けた方がよいのか」を、一人ひとり分けて考えていきます。

つつじヶ丘駅前内科クリニックでできること

当院は東京都調布市、つつじヶ丘駅前の内科・腎臓内科・アレルギー科クリニックです。糖尿病をはじめとする生活習慣病の診療を行っており、この記事のテーマに関しては、次のような対応が可能です。

  • 内科・腎臓内科の診察と生活習慣の相談
  • 血液検査(HbA1c、血糖、腎機能、脂質など)
  • 尿検査
  • 血圧測定
  • 体重・治療経過の継続的なフォロー
  • 健康診断結果を持参してのご相談
  • 薬物療法の調整(減量に伴う減薬の検討を含む)

院長は腎臓を専門としており、糖尿病と関わりの深い腎臓(糖尿病性腎症・慢性腎臓病)の評価を併せて行える点が、当院の特徴です。ご予約はLINE・WEB・お電話から、予約優先制で承っています。

当院で対応が難しい場合

一方で、当院だけでは対応が難しいケースもあります。その際は、無理に抱え込まず、適切な医療機関へおつなぎします。

  • 1型糖尿病や、インスリンの細やかな調整が必要な場合 → 糖尿病専門の医療機関をご紹介します
  • 血糖が非常に不安定で、入院による調整(教育入院など)が望ましい場合 → 病院での対応が必要です
  • 妊娠中・妊娠を希望される方の血糖管理 → 専門の医療機関をご案内します
  • 進行した合併症の精密検査・専門治療(眼科での網膜の精査、透析導入の判断など) → 連携先へご紹介します

「当院でできること」と「専門機関にお願いすべきこと」の線引きは、はっきりお伝えします。

よくある質問

Q. 一度薬を始めたら、本当に一生やめられないのですか? いいえ、必ずしもそうではありません。特に早期で体重を減らせた2型の方では、薬を減らす・中止できることがあります。ただし、自己判断での中止は血糖の急上昇を招くため、必ず主治医と一緒に進めてください。

Q. HbA1cが目標まで下がれば、すぐ薬をやめられますか? 下がったこと自体は良い変化ですが、その状態が薬なしで保てるかは別の問題です。腎臓や心臓を守る目的で続けることもあります。中止できるかは、経過を見ながら判断します。

Q. 薬を飲まずに、食事と運動だけで治せますか? 軽症で早期の方では、生活習慣の見直しで血糖が落ち着くこともあります。ただし全員に当てはまるわけではなく、必要な時期に薬を使うことが、将来の合併症を防ぐうえで有利になる場合もあります。

Q. 寛解したら、もう通院しなくてよいのですか? いいえ。寛解しても糖尿病が消えたわけではなく、再び血糖が上がることがあります。合併症のチェックも続ける必要があるため、定期的な受診をおすすめします。

Q. インスリンを始めたら、もう一生やめられませんか? 2型では、一時的にインスリンで立て直し、その後に飲み薬へ戻したり減らしたりできる場合があります。1型では、インスリンは体に不可欠でやめられません。ご自分のタイプを確認しておくことが大切です。

まとめ

「糖尿病の薬は一生」というイメージは、過度に恐れる必要はありません。早く見つけて体重を整えられれば、薬を減らせる方や、寛解に届く方もいます。一方で、続けることが目・腎臓・心臓を守る前向きな選択になる場合もあり、「まだ飲んでいる=失敗」ではありません。

分かれ目は、見つかった時期、体重、糖尿病のタイプ、そして薬の目的です。これは一人で見極めるのが難しい部分です。今の数値だけで一喜一憂せず、「自分は減らす方向を試せるのか、守りを固めるべきなのか」を、検査結果をもとに一緒に整理していきましょう。

健診結果やお薬手帳をお持ちいただければ、現状の見立てと今後の見通しをご説明します。調布市つつじヶ丘周辺で相談先をお探しの方は、当院までお気軽にご相談ください。

参考文献

  1. Riddle MC, Cefalu WT, Evans PH, et al. Consensus Report: Definition and Interpretation of Remission in Type 2 Diabetes. Diabetes Care. 2021;44(10):2438-2444. DOI: 10.2337/dci21-0034 https://diabetesjournals.org/care/article/44/10/2438/138556
  2. Lean MEJ, Leslie WS, Barnes AC, et al. Primary care-led weight management for remission of type 2 diabetes (DiRECT): an open-label, cluster-randomised trial. Lancet. 2018;391(10120):541-551. DOI: 10.1016/S0140-6736(17)33102-1(PMID: 29221645) https://www.diabetes.org.uk/about-us/news-and-views/weight-loss-can-put-type-2-diabetes-remission-least-five-years-reveal-latest-findings
  3. 実臨床に近い大規模コホートでの3年寛解率(約2.9%):Diabetes Care. 2025;48(10):1737. https://diabetesjournals.org/care/article/48/10/1737/162997
  4. Adler AI, Coleman RL, Leal J, et al. Post-trial monitoring of a randomised controlled trial of intensive glycaemic control in type 2 diabetes extended from 10 years to 24 years (UKPDS 91). Lancet. 2024;404(10448):145-155.(PMID: 38772405)DOI: 10.1016/S0140-6736(24)00537-3 (早期の良好な血糖管理による長期的な合併症・死亡リスク低下=レガシー効果)
  5. 日本糖尿病学会編. 糖尿病診療ガイドライン2024. 2024年発行. https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00864/

16. 執筆者情報

つつじヶ丘駅前内科クリニック院長
医学博士・腎臓専門医・透析専門医・内科認定医
小出高彰