
健診や糖尿病の通院で「尿たんぱくが出ています」「尿アルブミンが高めです」と言われると、頭に浮かぶのは「腎臓が悪くなったの?」「このまま透析になるの?」という不安ではないでしょうか。ネットで調べるほど、こわい言葉が並んでいて、かえって心配になった方も多いと思います。
先にお伝えしたいことが一つあります。尿たんぱくや尿アルブミンが出たことは、多くの場合「もう手遅れ」という意味ではありません。むしろ、まだ体に自覚症状が出ていない早い段階で「腎臓が少し気にかけてほしいと言っている」サインに気づけた、ということです。ここで気づけるかどうかが、その後の腎臓の歩み方を大きく左右します。
この記事では、糖尿病と腎臓の関係、尿たんぱく・尿アルブミンの数値の意味、そして次にどう動けばよいのかを、順番にお話しします。
まず結論──「悪くなることがある」は本当、でも「必ず透析」ではありません
「糖尿病で腎臓が悪くなる」というのは、残念ながら本当のことです。日本で新しく透析を始める方の原因として最も多いのが、糖尿病による腎臓の障害(糖尿病性腎症)で、2024年に新たに透析を導入した方のおよそ37.6%を占めていました[1]。数としては決して少なくありません。
ただし、ここを誤解しないでいただきたいのです。これは「透析を始めた人の中で糖尿病が原因の割合」であって、「糖尿病の人がみんな透析になる」という意味ではまったくありません。実際には、糖尿病があっても腎臓が大きく悪くならないまま過ごす方が多くいらっしゃいます。血糖や血圧の管理、そして早めの対応によって、腎臓の傷み方をゆるやかにできることが分かっています。
つまり、「悪くなることがある」は本当。でも「気づいて手を打てば、進み方を変えられる」もまた本当なのです。
どうして糖尿病で腎臓が傷むの?
腎臓の中には、血液をこして尿をつくる「糸球体(しきゅうたい)」という、とても細い血管の集まりがあります。片方の腎臓に約100万個あるといわれる、いわば小さなフィルターの束です。
血糖が高い状態が長く続くと、この細い血管がゆっくり傷んでいきます。フィルターの目が傷むと、本来は血液の中にとどまっているはずのたんぱく質(アルブミン)が、少しずつ尿にもれ出てきます。これが「尿たんぱく」「尿アルブミン」として検査に出てくるしくみです[2]。
大事なのは、この初期の段階では、痛みもむくみもなく、自覚症状がまったくないことがほとんどだという点です。だからこそ、症状を待っていると気づくのが遅れてしまい、尿検査という”見えないサインを拾う道具”が役に立ちます。

尿たんぱく・尿アルブミンの数値、どう読む?
健診でよく使われる尿の「試験紙(尿たんぱく定性)」は、簡単で便利ですが、ごく早い段階の変化は拾いきれないことがあります。試験紙では「たんぱく(−)」なのに、より細かく測る「尿アルブミン」ではすでに増え始めている、ということが糖尿病では起こり得ます[2]。
糖尿病の腎臓の状態は、尿中のアルブミンとクレアチニンの比(尿アルブミン/クレアチニン比、UACR)で、次のように整理されています[2]。
- 正常:30 mg/gCr未満
- 微量アルブミン尿:30〜299 mg/gCr
- 顕性(けんせい)アルブミン尿:300 mg/gCr以上
「微量アルブミン尿」は、まだ早い段階で、しっかり対策をすれば十分に間に合うことが多い時期です。「顕性アルブミン尿」になると腎臓への負担がより進んでいる状態ですが、それでもできる対策はあります。
もう一つ知っておいていただきたいのが、腎臓が血液をこす力をあらわす「eGFR(推算糸球体ろ過量)」です。血液のクレアチニン値から計算し、数字が小さいほどこす力が落ちていることを示します。
ただし、尿アルブミンは一回の結果だけで判断しないことが大切です。激しい運動の直後、発熱しているとき、尿路の感染があるときなどには、一時的に数値が上がることが知られています[2]。ですから、日を変えて再検査し、繰り返し高いかどうかで判断します。「一度だけ高かった=腎臓病」ではない、という点は安心材料にしてください。

ここが大事──早く気づけば、進み方をゆるやかにできる
一度大きく低下してしまった腎臓のはたらきを、元どおりに戻すことは難しいとされています[2]。だからこそ、この記事でいちばんお伝えしたいのは「早く気づくことの価値」です。尿たんぱく・尿アルブミンで早めに見つかることは、悪い知らせではなく、打つ手が多く残っている段階で気づけたという意味を持ちます。
具体的にできることには、次のようなものがあります。
- 血糖のコントロール(HbA1cなどの目標を主治医と相談して決める)
- 血圧の管理(腎臓を守るうえで血糖と同じくらい重要)
- 体重・食事・運動・禁煙などの生活習慣の見直し
- 腎臓を守る薬の活用
薬については、近年大きく進歩しています。ACE阻害薬やARBといった「RAS阻害薬」は、尿のアルブミンを減らし、腎臓の傷みが進むのを抑える土台の薬として使われてきました。さらにSGLT2阻害薬は、もともと血糖を下げる薬でしたが、糖尿病の有無にかかわらず腎臓を守る効果があることが大規模な研究で示され、現在は腎臓を守る目的でも広く使われています。国際的なガイドライン(KDIGO 2024)でまとめられた解析では、SGLT2阻害薬によって腎臓の病気が進むリスクがおよそ37%低下したと報告されています[3]。どの薬が向いているかは腎臓の状態や体質によって異なるため、必ず医師と相談して決めます。
受診を急いだ方がよいサイン
糖尿病による腎臓の変化は、多くはゆっくり進みます。それでも、次のような症状があるときは、早めの受診をおすすめします。
できるだけ早く(当日〜数日以内に)相談したい
- 顔・足・まぶたのむくみが数日以上続く、急に強くなった
- 尿の出る量が急に減った、尿がひどく泡立つようになった
- 尿の色が赤い・茶色い(血が混じっているように見える)
- 体重が短期間で急に増えた(体に水がたまっているサイン)
すぐに医療機関・救急を検討したい
- 息が苦しい、横になると呼吸が苦しい
- 強いだるさ、吐き気、意識がぼんやりする
これらは腎臓だけでなく、心臓など他の原因のこともあります。糖尿病の方で急に体調が変わったときは、我慢せず相談してください。
症状はないが、健診で指摘された場合
- 尿たんぱく・尿アルブミンの異常、eGFRの低下を指摘された
症状がなくても、数日〜2週間くらいを目安に、健診結果を持って相談されると安心です。

医療機関では何を調べるか
腎臓の状態を確かめるとき、医療機関では主に次のような検査を組み合わせます。
- 問診・診察:むくみの有無、血圧、これまでの経過、飲んでいる薬の確認
- 尿検査:尿たんぱく、尿アルブミン、血尿の有無
- 血液検査:クレアチニンからeGFRを計算、HbA1cなど
- 血圧測定:腎臓を守るうえで重要な情報
- 超音波(エコー)検査:腎臓の形や大きさ、他の原因がないかの確認
- 心電図:糖尿病では心臓の評価も大切なため、必要に応じて
一回の結果だけでなく、時間をおいて繰り返し確認することで、「本当に腎臓の変化なのか」「進む勢いはどのくらいか」を見極めていきます。
つつじヶ丘駅前内科クリニックでできること
当院では、糖尿病と腎臓に関して、次のような対応ができます。
- 尿検査(尿たんぱく・尿アルブミンなど)
- 血液検査(クレアチニン・eGFR・HbA1cなど)
- 血圧測定
- 腎臓などの超音波(エコー)検査
- 心電図検査
- 糖尿病・高血圧・脂質異常症など生活習慣病の診療
- 慢性腎臓病(CKD)の評価と経過のフォロー
- 健康診断結果の相談
- 必要に応じた専門医療機関へのご紹介
院長は腎臓専門医・透析専門医でもあり、「この数値はどのくらい心配なのか」「今なにをすべきか」を、生活に合わせて一緒に考えます。健診結果や、お薬手帳をお持ちいただけると、より具体的にお話しできます。予約はLINE・WEB・電話で承っており、予約優先制、キャッシュレス決済にも対応しています。

当院で対応できない場合
正確にお伝えするために、当院では行っていないこと、専門施設が必要になる場合も明記します。
- 腎生検(腎臓の組織を採る検査)は当院では実施していません
- CTやMRIなどの画像検査が必要な場合は、連携医療機関をご案内します
- 入院しての精密検査・治療が必要な場合は、病院での対応が必要です
- 透析の導入・維持透析は、専門の医療機関で行います
- 原因を確定するための専門的な評価が必要な場合は、専門医療機関をご紹介します
「当院でできること」と「できないこと」をはっきり分けたうえで、必要なときはスムーズに次の医療機関へおつなぎします。ご紹介が必要になっても、それは見放すという意味ではなく、あなたの腎臓にとって最適な場所で診てもらうための橋渡しです。
よくある質問
Q1. 尿たんぱくが出ました。もう腎臓は元に戻らないのでしょうか? 一度の結果だけでは判断できません。運動や発熱などで一時的に出ることもあるため、まず日を変えて再検査します。繰り返し出る場合でも、早い段階なら血糖・血圧の管理や薬で進み方をゆるやかにできることが多く、「出た=手遅れ」ではありません。
Q2. 症状がまったくないのですが、放っておいて大丈夫ですか? 糖尿病による腎臓の変化は、初期は症状が出ないのが特徴です。症状がないうちに数値で気づけたのは、むしろ好機です。無症状でも、健診結果を持って一度ご相談ください。
Q3. 糖尿病だと必ず透析になるのですか? いいえ。透析を始める方の原因として糖尿病が最も多いのは事実ですが[1]、糖尿病の方全員が透析になるわけではありません。多くの方は管理と早めの対応で、透析に至らずに過ごしています。
Q4. 血糖さえ下げれば腎臓は守れますか? 血糖はとても大切ですが、それだけでは十分でないことがあります。血圧の管理や、腎臓を守る薬(RAS阻害薬・SGLT2阻害薬など)を組み合わせることで、より腎臓を守りやすくなります[3]。何が向いているかは人によって違うため、医師とご相談ください。
Q5. 尿が泡立つのは腎臓が悪いからですか? 泡立ちだけで腎臓の病気とは決められません。ただ、細かい泡が消えにくい状態が続くときは、尿たんぱくの目安になることもあります。気になる場合は尿検査で確認しましょう。
Q6. 健診で「要精査」でしたが、どのくらい急げばよいですか? 強いむくみ・急な尿量減少・息苦しさなどがなければ、数日〜2週間を目安に受診で大きな問題になることは多くありません。ただし症状があるときは早めにご相談ください。
まとめ
- 「糖尿病で腎臓が悪くなることがある」は本当。でも「必ず透析になる」わけではありません。
- 尿たんぱく・尿アルブミンは、多くの場合”手遅れ”ではなく、早く気づけたサインです。
- 早い段階なら、血糖・血圧の管理や腎臓を守る薬で、進み方をゆるやかにできます。
- 一度の結果では決めず、繰り返し確認することが大切です。
- 強いむくみ・急な尿量減少・息苦しさがあれば早めに、症状がなくても健診結果を持って一度ご相談ください。
過度に不安になる必要はありません。ただ、確かめておく価値は十分にあります。気になる数値があれば、つつじヶ丘駅前内科クリニックにお気軽にご相談ください。
参考文献
[1] 日本透析医学会統計調査委員会. わが国の慢性透析療法の現況(2024年12月31日現在). 日本透析医学会雑誌 2025;58(12). 新規透析導入患者の原疾患第1位は糖尿病性腎症(37.6%)。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsdt/58/12/58_524/_article/-char/ja (統計本体PDF:https://docs.jsdt.or.jp/overview/file/2024/pdf/2024all.pdf )
[2] 日本糖尿病学会 編. 糖尿病診療ガイドライン2024. 第9章 糖尿病性腎症. 尿アルブミン/クレアチニン比(UACR)による微量アルブミン尿(30〜299 mg/gCr)・顕性アルブミン尿(300 mg/gCr以上)の分類、早期診断・早期治療の重要性。 https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/09.pdf
[3] Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) CKD Work Group. KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease. Kidney Int. 2024;105(4S):S117–S314. doi:10.1016/j.kint.2023.10.018.(SGLT2阻害薬による腎疾患進行リスクの低下、CKD管理の推奨) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38490803/
執筆者情報

つつじヶ丘駅前内科クリニック院長
医学博士・腎臓専門医・透析専門医・内科認定医
小出高彰
