糖尿病を放置するとどうなる?「三大合併症」をやさしく解説

健診結果を見て糖尿病について考える人

健診で「血糖値が高いですね」「HbA1cを一度みてもらってください」と言われても、体はどこも痛くないし、いつもと変わらない。だから、つい後回しにしてしまう。そんな方は少なくありません。実際、糖尿病は初期のうち、ほとんど自覚症状が出ないことが多い病気です。

ただ、ここが少しやっかいなところで、「症状がない=問題がない」とは限りません。自覚のないまま、体の中では少しずつ変化が進んでいることがあります。

とはいえ、必要以上に怖がっていただきたいわけでもありません。糖尿病の合併症は、血糖や血圧をきちんと管理していくことで、多くは予防したり、進み方をゆるやかにしたりできます。大切なのは、正しく知って、早めに手を打つことです。

この記事では、糖尿病を放置したときに起こりうる「三大合併症」について、できるだけやさしく整理します。あわせて、どんなサインに注意すればよいか、医療機関ではどんな検査をするのか、当院で何ができて何ができないのかもお伝えします。

まず知っておきたいこと ― 糖尿病が「血管の病気」といわれる理由

糖尿病でなぜ体に問題が起きるのか。ひとことで言うと、血糖の高い状態が長く続くと、全身の血管が少しずつ傷んでいくからです。糖尿病は「血管の病気」とも呼ばれます。

高血糖で傷つく細い血管と太い血管の図

傷みやすい血管は、大きく2種類に分けられます。

  • 細い血管(細小血管)の障害:目・腎臓・神経に起こりやすく、これが後で説明する三大合併症です。
  • 太い血管(大血管)の障害:心臓の血管(狭心症・心筋梗塞)や脳の血管(脳梗塞)、足の血管などに関わります。

糖尿病はけっして珍しい病気ではありません。厚生労働省の令和6年(2024年)「国民健康・栄養調査」では、「糖尿病が強く疑われる人」は全国で約1,100万人と推計され、成人のおよそ10人に1人にあたります。つまり、身近な多くの方に関係する話といえます。

三大合併症は、頭文字をとって「しめじ」と覚えられることがあります。

  • :神経障害
  • :目(網膜症)
  • :腎臓(腎症)

おおまかな傾向として、神経障害は比較的早い時期から出てくることがあり、網膜症や腎症は数年から10年以上の経過の中で進むことが多いとされています。ただし進み方には個人差が大きく、あくまで目安です。

糖尿病の三大合併症「しめじ」とは

糖尿病の三大合併症 しめじ(神経障害・網膜症・腎症)を示す図

し ― 神経障害

三つの中では、比較的早くあらわれることがあるのが神経障害です。多いのは、足先の左右対称のしびれやジンジンする感じ、感覚が鈍くなるといった症状です。手より足に出やすく、指先から始まって、少しずつ広がっていくことがあります。

糖尿病神経障害の予防に足を毎日確認する様子

見過ごせないのは、感覚が鈍くなると、足の傷ややけど、靴ずれに気づきにくくなるという点です。気づかないうちに傷が悪化し、細菌感染を起こしたり、治りにくくなったりすることがあります。進行すると足の組織が壊れてしまう(壊疽)こともあるため、足を毎日見る習慣が予防につながります。

また、内臓の働きを調節する自律神経が影響を受けると、立ちくらみ、便秘や下痢、汗のかき方の変化、性機能の低下などがみられることもあります。

め ― 網膜症(目)

網膜症は、目の奥にある「網膜」の細い血管が傷んでいく合併症です。やっかいなのは、初期にはほとんど自覚症状がないことです。見え方が変わらないからと油断しているうちに、静かに進んでいることがあります。

目の断面図と網膜の位置を示す図

進行すると、目の中の出血やむくみが起こり、視力の低下や、視野の一部が欠ける、飛蚊(黒い点が飛んで見える)といった症状が出て、重症になると失明につながることもあります。日本人が視力を失う原因(中途失明)の中でも、糖尿病網膜症は上位を占めています。

日本で行われた地域研究(久山町研究・舟形町研究など)では、糖尿病の方における網膜症の割合はおよそ15〜23%と報告されています。また、血糖コントロール(HbA1c)が高い状態が続いたり、糖尿病の期間が長かったりするほど、頻度が高くなる傾向が知られています。数字はあくまで研究対象や条件による目安ですが、「症状がなくても眼科で定期的に目の奥(眼底)をみてもらうこと」が、失明を防ぐうえでとても大切だと分かります。

じ ― 腎症(腎臓)

腎症は、腎臓の中で血液をろ過している「糸球体」という細い血管のかたまりが傷んでいく合併症です。これも初期は自覚症状に乏しく、尿にたんぱく(特に微量のアルブミン)が少しずつ出はじめることが、早い段階でのサインになります。

腎臓と糸球体の構造を示す図

進行すると、体のむくみが出たり、腎臓の働き(eGFRなどで評価します)が低下したりし、最終的に腎臓の機能が大きく落ちると、透析が必要になることがあります。

日本では、新たに透析を始める方の原因として最も多いのが、この糖尿病性腎症です。日本透析医学会の調査では、2024年に新しく透析を導入された方の原因の約37.6%を糖尿病性腎症が占め、長年にわたって第1位が続いています。

こう聞くと不安になるかもしれませんが、腎症は早い段階なら、尿の検査(尿たんぱく・尿アルブミン)と血液検査で見つけられます。そして、血糖と血圧の管理を中心とした対応で、進行をゆるやかにできる可能性があります。腎臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれるからこそ、症状が出る前の検査に意味があります。

受診を急いだ方がよいサイン

以下のような場合は、様子を見ずに医療機関へご相談ください。とくに意識や呼吸に関わる症状は、ためらわず救急の受診をご検討ください。

すぐに救急の受診を考えたい症状

  • 意識がぼんやりする、呼びかけへの反応が鈍い
  • 呼吸が荒い、息が苦しい、繰り返し嘔吐する
  • 強い脱力とともに、ろれつが回らない・体の片側が動かしにくい(脳の血管の症状の可能性)
  • 胸の強い痛みや締めつけ、冷や汗(心臓の血管の症状の可能性)

数日以内に受診をおすすめしたい症状

  • のどの強い渇き、水をたくさん飲む、尿の量が急に増えた、短期間で体重が減った(高血糖が進んでいるサインのことがあります)
  • 足に傷・水ぶくれ・赤み・化膿・黒ずみがある、または痛みを感じにくい
  • 急に視力が落ちた、視野の一部が見えない、黒い点が急に増えた(眼科を早めに)
  • 尿の泡立ちが続く、足やまぶたのむくみが気になる

医療機関では何を調べるか

クリニックで問診の様子

糖尿病そのものや合併症の状態を確認するために、一般的には次のような検査を行います。すべてを一度に行うわけではなく、症状や経過に応じて選びます。

  • 問診:症状、糖尿病を指摘された時期、生活習慣、服薬状況など
  • 血液検査:血糖、HbA1c(過去1〜2か月の血糖の状態)、腎機能(クレアチニン・eGFR)、脂質など
  • 尿検査:尿たんぱく、尿アルブミン(腎症の早期発見に有用)
  • 血圧測定:血圧の管理は合併症予防の要です
  • 心電図:不整脈や心臓の血管に関わる変化の確認
  • 足の診察・簡単な神経のチェック:感覚の低下や傷の有無を確認
  • 眼底検査(眼科で実施):網膜症の有無と進み具合の確認

治療の目安として、日本糖尿病学会は、合併症の発症・進行を防ぐための血糖コントロール目標をHbA1c 7.0%未満としています(食事・運動や副作用の少ない薬で無理なく達成できる場合は6.0%未満、治療の強化が難しい場合は8.0%未満など、状態に応じた目標も示されています)。ただし、年齢や持病、低血糖の起こりやすさなどによって、目指す値は一人ひとり異なります。ご自身の目標は主治医とご相談ください。

つつじヶ丘駅前内科クリニックでできること

つつじヶ丘駅前内科クリニックの外観

当院は内科・腎臓内科・アレルギー科のクリニックです。糖尿病と、その合併症のうち特に腎臓に関わる部分について、次のような対応が可能です。

  • 血糖・HbA1cの測定と、糖尿病の診療・生活習慣のご相談
  • 尿検査(尿たんぱく・尿アルブミン)と血液検査(クレアチニン・eGFR)による腎症の早期評価(腎臓内科として力を入れている領域です)
  • 血圧の測定と管理のご相談
  • 心電図検査、超音波検査
  • 高血圧・脂質異常症・高尿酸血症など、関連する生活習慣病の診療
  • 健康診断の結果についてのご相談
  • 足の状態の確認と、日常生活でのアドバイス
  • 必要に応じた、眼科や専門医療機関へのご紹介

「健診で血糖やHbA1cを指摘されたが、どうすればよいか分からない」という段階からのご相談で構いません。ご予約はLINE・WEB・お電話で承っており、予約優先制です。

当院で対応できない場合

当院では実施していない検査・治療もあります。次のような場合は、適切な医療機関をご案内します。

  • 眼底検査や網膜症のレーザー治療・手術:眼科での対応が必要です
  • CT・MRIなどの画像検査:連携する医療機関をご案内します
  • 腎生検や入院での精密検査:専門の医療機関へご紹介します
  • 透析の導入や入院を要する治療:病院での対応が必要です
  • 重度の足病変に対する外科的な処置:専門の診療科での対応が必要です

当院でできないことは、できるように見せることはいたしません。必要な場合は、適切な医療機関へおつなぎします。

よくある質問

Q. 症状がまったくないのですが、放置しても大丈夫でしょうか。 A. 糖尿病も、その合併症も、初期は自覚症状が出にくいのが特徴です。症状がないことは「安心」の材料にはなりにくく、むしろ症状が出る前に検査で確認しておくことが大切です。定期的な血液・尿検査、眼科での眼底検査をおすすめします。

Q. 一度合併症になったら、もう治らないのでしょうか。 A. 段階によります。早い段階で見つけて血糖や血圧を管理できれば、進行をゆるやかにできる可能性があります。一方で、進んでしまった状態を完全に元に戻すのは難しいこともあります。だからこそ、早めの発見と対応に意味があります。

Q. HbA1cはどのくらいを目指せばよいですか。 A. 合併症予防のための目安は、日本糖尿病学会でHbA1c 7.0%未満とされています。ただし、年齢や持病、低血糖の起こりやすさによって目標は変わります。ご自身の適切な目標値は、診察のうえで一緒に決めていきましょう。

Q. 甘いものをそれほど食べていないのに、なぜ糖尿病になるのでしょうか。 A. 糖尿病は甘いものの食べ過ぎだけで起こるわけではありません。体質(遺伝的な要因)、内臓脂肪、運動不足、加齢など、複数の要因が関わります。ご自身を責める必要はありません。

Q. 合併症の検査は、どのくらいの頻度で受ければよいですか。 A. 状態によって異なりますが、血液・尿検査や眼科の眼底検査は、多くの場合、定期的に受けることがすすめられます。適切な間隔は主治医とご相談ください。

Q. 糖尿病になったら、いずれ必ず透析になるのでしょうか。 A. いいえ、必ずではありません。透析に至る方は糖尿病の方の一部で、血糖と血圧の管理、腎症の早期発見によってリスクを下げられます。過度にご心配なさらず、まずは検査で今の状態を確認しましょう。

まとめ

  • 糖尿病は初期に自覚症状が出にくいため、「症状がない=大丈夫」とは限りません。
  • 放置して高血糖が続くと、全身の血管が傷み、三大合併症(神経障害・網膜症・腎症)につながることがあります。
  • ただし、過度に不安になる必要はありません。血糖・血圧の管理や早期発見によって、多くは予防や進行の抑制ができます。
  • 症状がなくても、血液・尿検査や眼底検査などを定期的に受けることが大切です。
  • のどの強い渇きや急な体重減少、足の傷、急な視力低下、むくみなどがあるときは、早めにご相談を。意識や呼吸に関わる症状は救急の受診をご検討ください。
  • 健診結果の見方から糖尿病・腎症の評価まで、当院でご相談いただけます。

参考文献

  1. 日本糖尿病学会 編・著.糖尿病治療ガイド2024.文光堂,2024年. https://www.bunkodo.co.jp/book/52BVY69UV1.html
  2. 日本糖尿病学会 編.糖尿病診療ガイドライン2024(第7版).南江堂,2024年5月30日発行. https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00864/
  3. 一般社団法人 日本糖尿病学会.「血糖コントロール目標」「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標について」. https://www.jds.or.jp/modules/important/index.php?content_id=66
  4. 日本透析医学会統計調査委員会.わが国の慢性透析療法の現況(2024年12月31日現在).日本透析医学会,2025年. https://docs.jsdt.or.jp/overview/file/2024/pdf/2024all.pdf
  5. 厚生労働省.令和6年(2024年)国民健康・栄養調査結果(2025年12月公表). https://www.mhlw.go.jp/
  6. 公益社団法人 日本眼科医会.「糖尿病で失明しないために」. https://www.gankaikai.or.jp/health/35/index.html

16. 執筆者情報

つつじヶ丘駅前内科クリニック院長 小出高彰

つつじヶ丘駅前内科クリニック院長
医学博士・腎臓専門医・透析専門医・内科認定医
小出高彰