糖尿病と「足」―― 足を守るフットケアのすすめ


糖尿病の合併症というと、目・腎臓・神経の障害や、心筋梗塞・脳梗塞を思い浮かべる方が多いと思います。しかし、実は「足」も、糖尿病でとても注意したい場所の一つです。小さな傷や靴ずれから始まったトラブルが、気づかないうちに悪化し、最悪の場合には足を切断せざるをえないことさえあります。逆にいえば、日々のちょっとしたケアで、その多くは防ぐことができます。足の障害は、いったん進んでしまうと治療が難しく、生活に大きな影響を与えます。その一方で、正しい知識と毎日のケアで、多くは予防できるのも事実です。今回は、なぜ糖尿病で足が危険なのか、その理由を分かりやすく整理したうえで、足を守るための具体的なフットケアの方法について解説します。

なぜ糖尿病では足が危ないのか

神経・血流・感染の3要因で小さな傷が潰瘍や切断につながる仕組みを示した図

糖尿病で足のトラブルが起こりやすく、そして重症化しやすいのには、三つの理由が重なっています。

一つ目は、神経の障害です。高血糖が続くと足の神経が傷み、痛みや熱さ、傷の感覚が鈍くなります。すると、靴ずれや小さな傷、やけどにも気づかず、放置してしまいます。長く糖尿病をお持ちの方のおよそ半数に、こうした神経の障害がみられるとされます。

二つ目は、血流の障害です。動脈硬化によって足へ向かう血管が細くなると、血のめぐりが悪くなり、傷が治りにくくなります。

三つ目は、感染への弱さです。血糖が高い状態では細菌と戦う力が落ちるため、傷が化膿しやすく、一気に悪化しやすくなります。

この三つが合わさることで、健康な人なら何でもない小さな傷が、気づかれないまま治らず、感染して深い潰瘍や壊疽(組織が死んでしまう状態)へと進み、ときに切断に至ってしまうのです。

数字で見る「糖尿病の足」

足のトラブルの多さは、研究でも示されています。糖尿病のある方が生涯のうちに足に潰瘍(皮膚がえぐれた深い傷)をつくる割合は、およそ19〜34%と報告されています。決してまれなことではありません。

さらに問題なのは、再発の多さです。いったん潰瘍が治っても、およそ1年で40%ほどの方が再発するとされ、足のトラブルは「一度きり」で終わりにくいのです。そして、足の切断の多くは、こうした潰瘍から始まります。足を失うことは、歩く力の低下を通じて生活の質を大きく下げるだけでなく、その後の健康にも影響することが知られています。だからこそ、「できてから治す」のではなく、「そもそもつくらない・繰り返さない」ための毎日のケアが何より大切になります。こうした足の障害は、糖尿病の合併症の中でも、日々のセルフケアで予防できる部分が大きいものの一つなのです。

毎日できるフットケア

足を守るために、今日から始められるケアをご紹介します。

まず基本は、毎日足を見ることです。入浴のあとなど、時間を決めて習慣にするとよいでしょう。足の裏や指の間まで、傷・水ぶくれ・赤み・タコ・色の変化がないかを確認します。目が届きにくい足の裏は、鏡を使うと見やすくなります。感覚が鈍くなっていると痛みで気づけないため、「見て確かめる」習慣がとても大切です。

次に、足を清潔に保ち、乾燥する場合は保湿しましょう。ただし、指の間は蒸れないように、水気をよく拭き取ります。爪は深爪をせず、まっすぐに切るのがコツです。深爪は巻き爪や傷のもとになります。

やけどにも注意が必要です。感覚が鈍っていると、熱さに気づきにくいため、湯たんぽやカイロ、熱すぎるお風呂には気をつけましょう。また、素足で歩くと傷をつくりやすいため、家の中でも靴下を履くと安心です。靴は足に合ったものを選び、履く前に中に小石などが入っていないか確認しましょう。

たこ・魚の目・水虫などは、自己流で削ったり市販薬で処理したりすると、かえって傷や感染のもとになることがあります。気になるときは自分で処理せず、医療機関に相談してください。

靴選びも足を守る大切なポイント

足に合った靴を選び、履く前に中を確認する様子のイラスト

足のトラブルの多くは、合わない靴による靴ずれや圧迫から始まります。靴は、つま先に少しゆとりがあり、足の形に合ったものを選びましょう。かかとがしっかり固定され、中で足が前後に滑らないことも大切です。新しい靴は、いきなり長時間履かず、短い時間から慣らしていくと靴ずれを防げます。靴を買うなら、足がむくみやすい夕方に合わせると失敗が少なくなります。また、履く前には靴の中に小石や異物が入っていないか手で確認する習慣をつけましょう。感覚が鈍っていると、異物が入っていても気づかず、傷の原因になることがあります。サンダルや先の細い靴、かかとの高い靴は、けがや変形につながりやすいため、日常づかいでは避けるのが安心です。

こんなときは早めに受診を

足に傷ができた、赤く腫れている、色が悪い(黒っぽい・紫っぽい)、じくじくして治らない、といった変化があるときは、早めに受診してください。また、足のしびれや、じんじんする感じ、左右で感覚が違う、足先がいつも冷たい、といったサインも、神経や血流の障害の表れかもしれません。糖尿病の足のトラブルは、「様子を見よう」と迷っているあいだに一気に進むことがあります。早く手を打つほど、足を守れる可能性が高くなります。ご自身で足を見るのが難しい方は、ご家族に確認してもらったり、通院のときに医師に足を見せたりするのもよい方法です。

足を守ることは、全身を守ること

足のケアの土台になるのは、やはり血糖・血圧・コレステロールをきちんと整え、血流と神経を守ることです。とくに喫煙は足の血流を大きく悪化させるため、禁煙は足を守るうえでも重要です。

当院では、糖尿病で通院されている方の足の状態や、神経・血流について問診・診察で確認し、日々のケアについてもご相談に応じています。必要に応じて、専門的な治療が可能な医療機関へのご紹介も行います。足のことで気になる点がある方は、どうぞお気軽にお声がけください。毎日の小さなケアの積み重ねが、大切な足を、そして生活そのものを守ることにつながります。


参考文献

  • Armstrong DG, Boulton AJM, Bus SA. Diabetic Foot Ulcers and Their Recurrence. New England Journal of Medicine. 2017;376(24):2367–2375.
  • Bus SA, Sacco ICN, Monteiro-Soares M, et al. Guidelines on the prevention of foot ulcers in persons with diabetes (IWGDF 2023 update). Diabetes/Metabolism Research and Reviews. 2024;40(3):e3651.