血糖値が気になる方にとって、毎日の「食べるもの」は、お薬に負けないくらい大切な治療の一部です。血糖を下げる、あるいは急に上げにくくする食べ物を上手に選ぶことは、糖尿病やその前段階であるインスリン抵抗性の予防・改善に大きく役立ちます。今回は、血糖にやさしい食べ物と、その「なぜ効くのか」という理由を、医学的な根拠とあわせて分かりやすく解説します。特別な食材ではなく、スーパーで手に入る身近なものばかりですので、できるところから取り入れてみてください。なお、ここで「血糖を下げる」とは、薬のように数値を急に下げるという意味ではなく、食後の急な上昇をゆるやかにし、血糖を安定させやすくするという意味だとお考えください。
① ナッツ

アーモンドやくるみなどのナッツ類には、血糖にうれしい成分がそろっています。血糖値を上げにくいインスリンの働きを助ける不飽和脂肪酸、そのインスリンを効率よく働かせるマグネシウム、そして糖の吸収をゆるやかにする食物繊維です。これらが組み合わさることで、食後の血糖の急な上昇をおさえてくれます。実際、アーモンドを食事にとり入れると、食後の血糖とインスリンの上昇が有意におさえられたという研究も報告されています。
ただし、ナッツはカロリーが高いため、食べ過ぎには注意が必要です。目安は1日20g程度、片手で軽くひとつかみほど。塩や砂糖で味付けされていない素焼きのものを選ぶと、間食の置きかえとしても役立ちます。
② 酢(穀物酢やリンゴ酢)

お酢に含まれる酢酸には、食べたものが胃から腸へ送られるスピードをゆるやかにし、糖の消化・吸収のペースを落とす働きがあります。その結果、食後に血糖が一気に跳ね上がるのをおさえてくれます。ご飯やパンなどの炭水化物と一緒にとると、血糖の上がり方がなだらかになります。食事と一緒に酢をとった人で、食後の血糖上昇が有意におさえられたという研究もあります。
とり方としては、大さじ1杯程度を、食事に取り入れるのがおすすめです。酢の物やドレッシングとして使うと続けやすいでしょう。原液のまま空腹時に飲むと、胃や歯への刺激になることがあるため、薄めて食事と一緒にとるのがコツです。
③ 玄米・全粒粉・大麦

同じ主食でも、精製された白米や小麦粉に比べて、玄米・全粒粉・大麦は血糖が上がりにくいのが特長です。これは、これらに食物繊維とマグネシウムが豊富に含まれているためです。食物繊維は糖の吸収をゆるやかにし、マグネシウムはインスリンの働きを高めて、血糖が体にとり込まれるのを助けます。とくに大麦に多い水溶性食物繊維は、糖の吸収をおさえる働きが強いことで知られています。
食物繊維の重要性は、大規模な研究でも裏づけられています。世界保健機関(WHO)の委託で行われた解析では、食物繊維を多くとる人は、少ない人に比べて糖尿病や心臓病、死亡のリスクがおよそ15〜30%低いことが示されました。1日25g以上を目安に、主食を少し置きかえるだけでも、その一歩になります。
④ ブルーベリー

ブルーベリーには、鮮やかな色のもとであるアントシアニンという成分が含まれています。体の中でくすぶる慢性的な炎症は、インスリンの効きを悪くして血糖を上がりやすくしますが、アントシアニンにはこの炎症をやわらげ、インスリンが働きやすい状態に整える作用があると考えられています。加えて食物繊維も豊富で、糖の吸収をおだやかにします。
ただし、注意したいのが食べ方です。ジャムや加糖されたものは砂糖が多く、かえって血糖を上げてしまいます。生のまま、または冷凍のブルーベリーを選ぶようにしましょう。
⑤ 野菜・海藻・きのこ

血糖を語るうえで欠かせないのが、野菜・海藻・きのこです。これらに共通するのは、食物繊維がたっぷり含まれていることです。食物繊維には、糖の吸収をゆるやかにして食後の血糖上昇をおさえるだけでなく、腸内環境を整える働きもあります。とくに、わかめやめかぶ、なめこ、オクラなどに含まれるネバネバした水溶性食物繊維は、糖の吸収をおさえる作用が強いのが特長です。
うれしいのは、野菜・海藻・きのこの多くがカロリーの低い食材だという点です。食事の最初に、また量を意識してとることで、血糖の安定にも、体重の管理にも役立ちます。「まず野菜から、そしてあと一品、海藻やきのこを足す」を合言葉にしてみてください。
食べ方の工夫も、同じくらい大切
何を食べるかだけでなく、「どう食べるか」も血糖を大きく左右します。
まず取り入れやすいのが、食べる順番を意識することです。野菜、次にたんぱく質のおかず、最後にご飯やパンといった炭水化物、という順番(ベジファースト)で食べると、食後の血糖の急上昇をおさえられます。最初に食べた野菜の食物繊維が胃の中でゲル状になり、あとから入ってくる糖の吸収をゆっくりにしてくれるためです。また、先にたんぱく質をとることで、糖を処理するインスリンの準備が整い、血糖の山がなだらかになります。
もう一つ大切なのが、よく噛んでゆっくり食べることです。よく噛むと消化・吸収のスピードがゆるやかになり、食後血糖の急な上昇をおさえられます。さらに、満腹感は食べ始めてから20分ほど遅れて脳に伝わるため、早食いは食べ過ぎのもとです。ひと口ごとに箸を置くなど、意識してゆっくり食べる工夫が、結果的に血糖の安定につながります。
無理なく、続けることが大切
ここで紹介した食べ物や食べ方は、どれも今日から取り入れられるものばかりです。ただし、大切なのは一度に完璧を目指すことではなく、無理なく続けることです。ナッツを間食に置きかえる、白米に大麦を少し混ぜる、食事の最初に野菜を食べる、いつもの一品に酢を使う――そんな小さな工夫の積み重ねが、やがて血糖の安定という大きな成果につながっていきます。血糖値やHbA1cが気になる方、どんな食事にすればよいか迷っている方は、当院までお気軽にご相談ください。食事の内容や血液検査の結果をもとに、一人ひとりの生活に合わせて、続けやすい方法を一緒に考えていきます。
参考文献
- Reynolds A, Mann J, Cummings J, et al. Carbohydrate quality and human health: a series of systematic reviews and meta-analyses. The Lancet. 2019;393(10170):434–445.
- Jenkins DJA, Kendall CWC, Josse AR, et al. Almonds decrease postprandial glycemia, insulinemia, and oxidative damage in healthy individuals. Metabolism. 2002. (食後血糖・インスリン上昇の抑制)
- Johnston CS, Kim CM, Buller AJ. Vinegar improves insulin sensitivity to a high-carbohydrate meal in subjects with insulin resistance or type 2 diabetes. Diabetes Care. 2004;27(1):281–282.
