糖尿病で使われる薬

糖尿病と診断されて、医師から薬を処方されたけれど、「この薬はどんな役割をしているの?」「なぜ他の糖尿病の人と違う薬なの?」と疑問に思ったことはありませんか。現在糖尿病の薬はどんどん研究が進んでおり、飲み薬だけで7種類以上あり、注で行う治療もあります。糖尿病治療薬の種類と特徴について解説します。

調布市 糖尿病内科 内服薬

糖尿病の薬は、なぜこんなに種類があるのか?

糖尿病の薬が多い理由は、一人一人糖尿病になっている状態が違うからです。
インスリンが膵臓からうまく分泌出きていない人もいれば、インスリンはしっかり出ているのにうまく働かせることが出来ない・いわゆる「インスリン抵抗性」という状態の方もいます。

同じ糖尿病でも、他の糖尿病の人と違う薬を使うことは、よくあります。

糖尿病の飲み薬―7つのタイプとその働き

ビグアナイド薬(メトホルミン)―昔から使われている第一選択薬

メトホルミンは、昔から使われている薬ですが、現在でも糖尿病を治療する際に、一番最初の薬としてよく使われています。メトホルミンは、肝臓における糖の生産を抑え、さらに、筋肉での糖の取り込みを促進するため、血糖値を下げることができます。

この薬は、とても安価で使いやすく、さらに、心筋梗塞などの死亡リスクを減らす効果があるとされています。ただし、下痢などの消化器症状が出ることがあるため、小さい量から始めます。また、腎臓の機能が低下している人は、乳酸アシドーシスという副作用が出やすいため、注意が必要です。

DPP-4阻害薬―血糖値が高い時だけ働く賢い薬

食べ物が体の中に入ると、腸から「インクレチン」というホルモンが分泌され、インスリン分泌を促します。インクレチンは体内ですぐ分解されてしまいますが、DPP-4阻害薬を用いると、インクレチンを分解する酵素を阻害できるため、インスリンを出しやすくします。

DPP-4阻害薬の特徴は、血糖値が高い時だけ効果を発揮するため、低血糖になりにくいです。副作用も少なく使いやすい薬です。

SGLT2阻害薬―尿から糖を出す新しいアプローチ

SGLT2阻害薬は、最近出てきた新しい薬です。通常、腎臓での糖の再吸収(再度、糖を体の中に取り込む)を阻害することで、糖分を尿として外に排出させる薬です。糖分を尿から排出するため、体重を減らす効果もあります。

SGLT2阻害薬は、糖尿病の薬なのですが、じつは多くの研究にて、心臓を守る作用があり、心不全を減らす効果があります。さらには、腎臓にも効果があり、腎臓の機能低下を抑えることができるとされています。

注意点としては、尿に糖を出すため、尿路感染症になりやすく膀胱炎を頻繁に発症してしまう場合は、投与を中止する場合があります。

αグルコシダーゼ阻害薬―食後の血糖上昇を緩やかに

腸で行われている糖の分解をゆっくりにすることで、糖の吸収を穏やかにし、食後の血糖上昇を抑えることができます。

しかし、糖が通常よりも長く腸に停滞するため、下痢や腹部膨満感が出やすいです。また、通常の薬とは違い、食直前に飲むことが必要です。

スルホニル尿素(SU)剤―膵臓を強力に刺激

膵臓に対してインスリンの分泌を促す薬です。効果が強いとされています。その反面、低血糖のリスクが高いです。また、体重増加につながることもあります。

速効型インスリン分泌促進剤(グリニド薬)

膵臓を刺激する薬ですが、作用時間が短く、食後の血糖値を下げるために使われます。食事の直前に内服します。

チアゾリジン薬(ピオグリタゾン)

脂肪細胞に作用し、インスリンの効果を改善する薬です。脂肪肝を改善させる効果もあります。副作用として、むくみが起こりやすいため、注意が必要です。

注射薬―インスリンとGLP-1受容体作動薬

調布市 糖尿病内科 インスリン

インスリン注射―決して「最後の手段」ではない

インスリンには、食後の血糖上昇を抑える「超速効型・速効型」、1日を通して血糖値の土台を支える「持効型・中間型」、両者を混ぜた「混合型」があります。患者さんに合わせたインスリンタイプを使用します。

実は、インスリンが必要になったらもう最後だと思っている方も多いのですが、それは間違いです。インスリン治療の目的は、疲れた膵臓を休ませることで、血糖値を改善することで、合併症を起こさせないようにすることです。

GLP-1受容体作動薬―血糖と体重を同時に改善

インクレチンを人工的に作る注射薬です。血糖値が高い時だけインスリン分泌を促すため、低血糖のリスクが少ないです。

注射の頻度は薬剤によって異なり、1日2回、1日1回、週1回のタイプがあります。最近では、GIP/GLP-1受容体作動薬という、さらに強力な体重減少効果を持つ薬が登場しています。

副作用として、吐き気などの消化器症状が約3割の方に見られ、1割程度の方は継続が難しくなることがあります。