近、患者さんから「マンジャロという薬で本当に痩せるの?」という質問をよくいただきます。今日は、研究結果をもとに、マンジャロについてわかりやすくお話しします。
マンジャロってどんな薬?
マンジャロは、体の中で自然に作られる2種類のホルモン(GIPとGLP-1)の働きを真似する、新しいタイプの薬です。
食事をすると、腸からこれらのホルモンが出て:
- 血糖値を下げるインスリンを出させる
- 食欲を抑える
- 満腹感を長く続かせる
という働きをします。
従来の薬は1種類のホルモンしか真似できませんでしたが、マンジャロは2種類同時に働きかけるので、より強い効果が期待できます。
どのくらい体重が減るの?
海外の大規模な研究(2,539人が参加)で、約1年半薬を使った結果:
- マンジャロ5mg: 平均15%の体重減少
- マンジャロ10mg: 平均19.5%の体重減少
- マンジャロ15mg: 平均20.9%の体重減少
- 偽薬(比較用): わずか3.1%の減少
具体例でいうと: 体重100kgの人がマンジャロ15mgを使った場合、平均で約21kg減って、79kgになる計算です。
さらに驚くのは、15mg使用者の91%が5%以上痩せて、57%の人が20%以上痩せたという結果です。
日本人やアジア人でも効果はあるの?
中国人を対象にした研究でも、同じように効果があることが確認されています。欧米人だけでなく、アジア人の体質でもしっかり効果が出るようです。
なぜ痩せるの?そのしくみ
マンジャロが効く理由は3つあります:
①食欲が自然に減る
脳の「お腹いっぱい」を感じる部分に働きかけるので、無理なく食べる量が減ります。多くの人が「自然に食べたい気持ちが減った」と言っています。
②満腹感が長続きする
胃から腸へ食べ物が移動するスピードをゆっくりにするので、長い時間お腹が空きにくくなります。
③脂肪が燃えやすくなる
体に溜まった脂肪をエネルギーとして使いやすくします。減った体重の約75%が脂肪で、筋肉はあまり減らないという良い結果も出ています。
体重以外にも良いことがある
痩せるだけでなく、健康面でもたくさんの改善が見られました:
- お腹周り: 平均14〜18cm減少
- 血圧: 平均6〜7mmHg下がる
- 中性脂肪: 約25%減少
- 善玉コレステロール: 約8%増加
- 糖尿病予備軍の人の95%が正常な血糖値に
これらは、将来の心臓病や糖尿病のリスクを大きく下げることにつながります。
糖尿病がある人にも効果はある?
はい、あります。糖尿病のある肥満の方1,878人を対象にした研究では:
- マンジャロ10mg: 平均12.8%の体重減少
- マンジャロ15mg: 平均14.7%の体重減少
さらに、血糖値も同時に良くなりました。体重と血糖値の両方を改善できるのは、とても理想的です。
薬をやめたらどうなるの?
大事なポイントです。別の研究で、薬を続けた人と止めた人を比べました:
- 続けた人: さらに痩せて、合計で平均25.3%減
- 止めた人: リバウンドして、ほぼ元の体重に戻った
つまり、効果を保つには続けることが大切ということです。
副作用はあるの?
主な副作用は胃腸に関するものです:
- 吐き気
- 下痢
- 便秘
研究では24〜33%の人に吐き気が見られましたが、ほとんどは軽いもので、使い始めの数週間だけです。体が慣れると治まることが多いです。
副作用がひどくて薬をやめた人は、全体の4〜7%程度でした。
どのくらいの期間使えばいいの?
研究によると、多くの人が1年〜1年3ヶ月くらいで一番効果が出ることがわかっています。最大の効果を得るには、少なくとも1年は続けることがおすすめです。
長年肥満治療に関わってきて、「食べなければ痩せる」という単純な話ではないことを痛感しています。人間の体は、体重が減ると元に戻そうとする仕組みを持っているからです。
マンジャロはその壁を乗り越える手助けをしてくれますが、魔法の薬ではありません。
一番良い結果が出るのは:
- バランスの良い食事
- 適度な運動
- マンジャロの使用
この3つを組み合わせたときです。
また、以下の方は使えません:
- 甲状腺の特定のがんの既往・家族歴がある人
- 重い膵炎になったことがある人
まとめ
マンジャロは、大規模な研究で平均20%前後の体重減少が証明されている、効果の高い薬です。これまでの薬では難しかったレベルの減量が可能になりました。
ただし、覚えておいてほしいこと:
- 続けて使うことが大切
- やめるとリバウンドのリスクがある
- 食事や運動などの生活習慣改善と組み合わせることが成功の鍵
もしマンジャロでの治療を考えている方は、ぜひ一度ご相談ください。あなたの健康状態や目標に合わせて、一緒に最適な治療計画を考えていきましょう。
参考文献:
- Jastreboff AM, Aronne LJ, Ahmad NN, et al. Tirzepatide Once Weekly for the Treatment of Obesity. N Engl J Med. 2022;387(3):205-216. doi:10.1056/NEJMoa2206038
- Min T, Bain SC. The Role of Tirzepatide, Dual GIP and GLP-1 Receptor Agonist, in the Management of Type 2 Diabetes: The SURPASS Clinical Trials. Diabetes Ther. 2021;12(1):143-157. doi:10.1007/s13300-020-00981-0
- Garvey WT, Frias JP, Jastreboff AM, et al. Tirzepatide once weekly for the treatment of obesity in people with type 2 diabetes (SURMOUNT-2): a double-blind, randomised, multicentre, placebo-controlled, phase 3 trial. Lancet. 2023;402(10402):613-626.

