ストレスと血糖値の関係|糖尿病とストレス管理術

ストレス血糖上昇 運動・生活習慣系

「最近、仕事が忙しくて血糖値が安定しない」
「家族のことでイライラすると、なぜか血糖値が上がる」
こんな経験はありませんか。

実は、ストレスと血糖値には深い関係があることが、世界中の研究で証明されています。今回は、ストレスがなぜ血糖値を上げるのか、そして対処法をご説明します。

ストレスでなぜ血糖値が上がるのか

体には、危険を感じたときに「戦うか逃げるか」を判断する機能があります。
上司に怒られた・・・
家族とケンカした・・・
仕事の締め切りに追われている・・・
こういったストレスを感じると、体は「エネルギーが必要だ!」と反応します。

このとき、副腎という臓器からあるホルモン(コルチゾール)が出てきます。このホルモンは、肝臓に蓄えている糖分を血液中に放出するよう指示します。そうすると血液中に糖分がでるので、血糖値はあがります。すなわち、食べ物を食べなくても、ストレスだけで血糖値が上がってしまいます。

実は、研究にてストレスホルモンは血糖値を上げるだけでなく、インスリンの効き目も悪くしてしまうことも分かっています。

ストレスを減らせば、血糖値は良くなるのか

じゃあストレスを減らしたら、血糖値がよくなるのか?疑問に思いますよね。

アメリカのデューク大学での研究は、108名の2型糖尿病の患者さんを対象としました。半分の人には、ストレスを減らすようなプログラムに参加してもらいました。このプログラムとおは、リラックスの仕方、イライラしたときの対処法などの簡単にできるプログラムです。

そして1年後には、ストレス管理を学んだ人達は、学ばなかった人達に比べて、HbA1cが0.5%も低くなっていたのです。たった0.5%ですが、これは糖尿病の合併症リスクが下がる改善です。

血糖改善のために、5つのストレス対策

では、具体的に何をすればいいのでしょうか。すぐに始められる方法をご紹介します。

1. 完璧を目指さない 
完璧主義はつかれます。完璧主義は、大きなストレスになります。【今日は血糖値が高かったけど、明日改善しよう】と、自分に優しくしてあげてください。

2. 好きなことを週に1回は必ずやる 
趣味の時間、友達とのおしゃべり、散歩、読書。何でもいいので、「これをやると気分が良くなる」ということを、週に1回は必ず予定に入れましょう。忙しくても、自分のための時間は確保してください。

3. 問題を紙に書き出してみる
頭の中でグルグル考えているだけでは、ストレスは大きくなるばかりです。悩んでいることを紙に書き出してみると、意外と「自分ではどうしようもないこと」で悩んでいることも多いです。

4. 1日10分のリラックスタイム 
朝起きたとき、お昼休み、寝る前など、1日のうち10分だけでいいので、ゆっくり深呼吸をする時間を作りましょう。深呼吸するだけで体の緊張がほぐれ、ストレスホルモンの分泌が抑えられます。

5. 誰かに話す 
一人で抱え込まないことが何より大切です。家族、友人、主治医、看護師さん、誰でもいいので、「最近ちょっとしんどくて」と正直に話してみましょう。話すだけで気持ちが楽になりますし、思わぬアドバイスがもらえることもあります。

おわりに

ストレスと血糖値の関係は、「気持ちの問題」ではなく、体の中で実際に起きている反応です。だからこそ、ストレス管理は、薬を飲んだり食事に気をつけたりするのと同じくらい、大切な糖尿病の治療なのです。

今日ご紹介した方法は、どれも特別な道具やお金は必要ないため、今日から始めらます。全部を一度にやる必要はありません。一つでも「これならできそう」と思ったことから、気楽に始めてみてください。


参考文献

Surwit RS, van Tilburg MAL, Zucker N, McCaskill CC, Parekh P, Feinglos MN, Edwards CL, Williams P, Lane JD. (2002). “Stress Management Improves Long-Term Glycemic Control in Type 2 Diabetes.” Diabetes Care, 25(1):30-34

Hackett RA, Steptoe A. (2017). “Type 2 diabetes mellitus and psychological stress—a modifiable risk factor.” Nature Reviews Endocrinology, 13:547-560.