糖尿病性腎症を防ぐには?人工透析を回避するための早期対策

調布市 腎臓と糖尿病 運動・生活習慣系

糖尿病性腎症は、糖尿病患者の約20%が発症する重篤な合併症であり、人工透析を必要とする慢性腎臓病(CKD)の最大の原因となっています。しかし、早期発見と早期治療により、病気の進行を遅らせ、透析を回避できる可能性があります。

糖尿病性腎症は「早期発見」が大事

糖尿病性腎症の怖いところは、初期段階では全く症状がないことです。とくに体は痛くないから大丈夫!と思っていても、腎臓は静かに傷ついているかもしれません。

最初のサインは「微量アルブミン尿」で、尿の中にごく少量のタンパク質が出ている状態です。これは普通の尿検査では分かりにくいのですが、専門的な検査で見つけることができます。

血糖値のコントロールが最重要

腎臓を守るために重要なのが、血糖値を高い状態にしないことです。目安となるのは「HbA1c」という検査値で、これは過去1~2ヶ月の血糖値の平均を表します。

2019年の研究では、HbA1cを7%未満に保つことで、腎臓の病気になるリスクを大幅に減らせることが示されています。

最近では、血糖値を下げるだけでなく、腎臓を保護する効果が認められている薬も登場しています。SGLT2阻害薬という薬は、大規模な研究で腎臓が悪化することを抑制する効果が証明されています。

血圧管理も重要

高血圧は腎臓にとって大きな負担です。血圧が高いと、腎臓の細い血管が傷つきやすくなり、病気の進行が早まってしまいます。

目標となる血圧:

  • 基本目標:140/90mmHg未満
  • 腎機能低下がある方:130/80mmHg未満

腎臓をまもるために、日々の生活で気をつけること

毎日の生活習慣を見直すことが最も大切です。

食事のポイント:

  • タンパク質は取りすぎない:肉や魚は適量に。体重1kgあたり0.8g程度が目安です(体重60kgなら1日48g程度)
  • 塩分は控えめに:1日6g未満を目指しましょう。加工食品や外食は塩分が多いので注意が必要です
  • バランスの良い食事:野菜や果物も適度に取り入れましょう

その他の生活習慣:

  • 適度な運動:散歩やウォーキングなど、体を動かす習慣をつけましょう
  • 禁煙:タバコは、血管をボロボロににするため、腎臓の状態を悪化させます。
  • 適正体重の維持:肥満も腎臓に負担をかけます

引用論文

  1. McGrath K, Edi R. “Diabetic Kidney Disease: Diagnosis, Treatment, and Prevention.” American Family Physician. 2019;99(12):751-759.
  2. Gross JL, et al. “Diabetic Nephropathy: Diagnosis, Prevention, and Treatment.” Diabetes Care. 2005;28(1):164-176.
  3. Thomas MC, et al. “Diabetic kidney disease.” Nature Reviews Disease Primers. 2015;1:15018.