実は、現代人の睡眠時間は、昔に比べると短くなっています。アメリカにおいて、1960年代には平均8時間程度睡眠をとっていましたが、今では30%以上の人が6時間以下しか睡眠をとっていないんです。
しかも、この睡眠時間が減っていることと、糖尿病や肥満の増加が、ちょうど同じ時期に起こっているのです。
睡眠不足で体が「老化」する?
論文にて若い男性に、6日間連続で1日4時間しか寝ない生活をしてもらう実験をしました。
その結果は、血糖値が6日間の睡眠不足によって、血糖値が上がっていました。しかもその血糖値は、60歳程度と同様の血糖値だったんです。たった、6日間で、食べ物をうまく処理できない体になってしまったんです。
睡眠不足は体を一時的に「老化」させ、糖尿病になりやすい状態にしてしまうということです。しかも、これは健康な若者で起きた変化ですから、すでに血糖値が高めの方や、高齢の方では、さらに大きな影響があると考えられます。
寝不足だと、なぜお腹が空くの?
睡眠不足が血糖値に影響を与える理由は、大きく分けて3つあります。
1つ目は、体が糖をうまく処理できなくなることです。 寝不足になると、肝臓が必要以上に糖を作り出してしまい、逆に筋肉は糖をうまく取り込めなくなります。まるで、体の中の交通整理がうまくいかなくなったような状態です。その結果、血液中に糖が溢れてしまい、血糖値が上がるのです。
2つ目は、食欲のコントロールが効かなくなることです。 私たちの体には「レプチン」という「もうお腹いっぱい」と教えてくれるホルモンと、「グレリン」という「お腹が空いた」と教えてくれるホルモンがあります。睡眠を4時間に制限すると、レプチンが約20%減り、グレリンが増えることが分かりました。
つまり、実際には十分に食べているのに、脳が「お腹が空いている」と勘違いしてしまうのです。夜更かしすると、ついつい夜食を食べたくなるのは、体の仕組みでそうなっていたんです。
3つ目は、動きたくなくなることです。 睡眠不足で疲れていると、体を動かすのが億劫になりますよね。運動量が減れば、当然カロリーの消費も減ってしまいます。
また、アメリカの看護師さん数万人を10年間追跡調査した研究では、5時間以下しか寝ない人は、7〜8時間寝る人に比べて、糖尿病になるリスクが明らかに高いことが分かりました。
糖尿病の方においても、睡眠不足が続くと、血糖値のコントロールを示すHbA1cという数値が悪化することも分かりました。
今日からできること
毎晩7時間以上の睡眠をとることが大事です。たったこれだけで、糖尿病のリスクを大きく減らせます。
「忙しくて7時間も寝られない」という方も多いでしょう。でも、考えてみてください。睡眠不足で糖尿病になってしまったら、その後の人生でもっと多くの時間と労力を、病気の治療に費やすことになります。睡眠は、将来の健康への「貯金」なのです。
・寝る時間を決めて、同じ時間にベッドに入る
・寝る1時間前からスマホやパソコンを見ない
・日中に運動をする
対策をすれば、睡眠不足は改善できます。しっかりと睡眠をとることは、血糖値を正常化させ、糖尿病のリスクを下げてくれます。
【参考文献】
Knutson KL, Spiegel K, Penev P, Van Cauter E. “The metabolic consequences of sleep deprivation.” Sleep Medicine Reviews, 11(3):163-178. Sleep Medicine Reviews


